ほとんどの音楽には拍子があり、その拍子の基本の強拍と弱拍があります。
「そんなこと知っている」と多くの人は思うでしょうが、ピアノ演奏にしっかりと生かされているでしょうか。ここでは、誰でも知っていることではあると思いますが、拍の基本的なことをみていきましょう。
拍子を確認
まず、基本的なことですが、拍子を確認してみましょう。
音楽には、4分の4拍子、4分の3拍子などの種類があり、それぞれの拍に強拍と弱拍があります。
このページでは、拍の強さをわかりやすいように、便宜的に以下のような丸で表していきます。
最も簡素な拍子に2拍子と3拍子がありますが、例えば4分の2拍子と4分の3拍子の強拍と弱拍は、以下のようになっていますね。
2拍子の拍は単純に、1拍目が強で、2拍目が弱の、「強・弱」です。
3拍子もやはり1拍目が強で、2拍目と3拍目が弱の、「強・弱・弱」です。
では、実際の楽曲でも多い、4分の4拍子と8分の6拍子の強拍と弱拍も見てみましょう。
2拍子から派生して成り立ったといわれている4拍子は、単純な拍子とは少々異なって、1拍目が強、2拍目と4拍目は弱、そして3拍目も強ではありますが、1拍目よりは弱い強ですから、中強といったところでしょう。
同じように8分の6拍子も中強の拍を持っているのがおわかりいただけると思います。
以上が、一般的な楽曲でよく演奏される拍子の強拍と弱拍、そして中強拍の確認です。
「そんな基本的なこと、誰でも知っているのでは?」と思う方もたくさんいるでしょう(知らなかった方は、今知ることができたのですから、大丈夫です)。
しかし、実際の演奏では、基本の拍を全く無視して演奏をする人は残念ながら大勢いて、しかもモーツァルトやベートーベンのピアノソナタなどを弾いているくらいのレヴェルの人にもたくさんいるのです。
では、どうしてそんな演奏になってしまうのでしょうか?
演奏では常に拍を
「強拍と弱拍がある」などの知識として知っているだけでは、不十分です。拍子のある音楽を演奏するということは、常にその拍感で演奏するということです。実際の有名曲に拍子の強拍と弱拍をあてはめてみましょう。
こんな感じになって、特に左手の伴奏系ではしっかりと拍感を出して弾きたいものです。
もちろん、フレーズ、メロディーの流れ方、クレッシェンドやディミヌエンドなどのデュナーミク、アクセントなど、音楽にはいろいろな要素や表情、表現もあるので、いつも強拍や弱拍の基本そのままではありませんし、いつでも最優先されるわけではありません。
それでも、拍は常に感じて弾くことになります。
この拍子を「常に感じてピアノ演奏」ができている方は、いったいどれくらいいるのでしょうか。
拍子について知っていても、ソルフェージュなどの練習では拍子を意識できていても、実際のピアノ演奏では活かされていないのであれば、意味がありません。
音を一つもミスしていないのに、一応楽譜どおりに表情もつけているのに、いまひとつ冴えが無いような演奏になっている方も結構いて、それは拍子の基本の拍を感じて演奏できていないことが、原因の一つである場合も。そして、それが素晴らしい演奏との大きな差である場合も少なくないでしょう。
拍子の基本的な拍感というのは、音楽の基本でありながら最も重要なことのひとつであることを十分意識する必要があります。
拍感を体の中に
ピアノ演奏では常に拍子を意識をすると言っても、ピアノは演奏中にたくさんの音を一人で扱うのですが、「この音は強拍だから強く、この音は弱く、これは中くらいで・・・」などと考えていたら演奏できません。
では、どのようにしたら良いのでしょうか。
答えは「拍子を体で感じられる」ようにするのです。つまり、特別な意識をしなくても、拍子の拍感を持って常にピアノを弾けるようになることが重要です。
それほど特別に難しいことではありません。通常は以下の2つの点が重要です。
1. 慣れている曲や簡単な曲を、拍子を十分に意識して弾いてみましょう
特にこれまで拍をあまり感じないで平坦に弾くクセがついてしまっている方は、少し大げさなくらいに拍を意識して弾きます。その後で洗練させていくようにしてもいいでしょう。
2. たくさんの音楽を聴きましょう
何といってもこれが重要です。リズム感の素晴らしい音楽をたくさん聴くことによって、体に(脳に)感覚を入れてしまうことが、ピアノ演奏に活きてくるでしょう。
もちろんピアノ曲だけではなく、オーケストラ曲や室内楽なども積極的に聴くといいと思います。
どちらもすぐにでもできることですから、拍子に対する意識がこれまであまり高くなかった方は、少し意識してみてください。
- 補足
- オーケストラや吹奏楽などの大人数の音楽団や、バンド系などで演奏された方、または良く聴くからならおかわりでしょうが、いくつものパートで分けて演奏するスタイルでは、拍を担当する楽器がだいたい決まっている(例えばチューバやコントラバス、ドラムセットなど)ので、他のメロディー担当の楽器は拍を意識しないで弾いても、全体としてはそれなりの仕上がりに聴こえるものです。
しかし、ピアノは独りですから、重要なメロディーを弾くことは大事ですが、同時に拍子の拍感も重要です。このページに書かれていることは基本内容ですが、その基本の拍がしっかり身についている演奏と、そうではない演奏では決定的に質が違うものです。
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