自分のピアノ演奏を客観的に聴くことは普段の練習では難しいものです。
そこで、誰もが考えるのが”演奏を録音して聴く”ということだと思います。ここでは、録音を普段の練習に使う方法を考えてみましょう。
簡単な録音機器を準備しよう
ピアノ演奏を録音する方法はいくつもありますが、普段の練習に役立つためであれば、高価な録音機器やピアノに取り付けるタイプの専用機器ではなく、MP3形式で録音される普通のICレコーダーで十分です。
下は筆者が練習録音で普段使っているもの。
ICレコーダーは音がモノラルやステレオなどの違い、記録容量やその他の機能などによって価格も異なりますが、数千円〜2万円以下くらいのもので十分に使えます。操作も一度覚えると簡単で、面倒な巻き戻し作業も無く、長時間録音もできるので便利です。
練習録音というのは、音の質をきれいに録音するのが目的ではないので、うまく録音する必要はありません。しかし、レコーダーの置き場所やマイク感度の設定によっては、音の割れがとても目立つこともあるので、いろいろと試してみるといいでしょう。
一例として、筆者使用のレコーダーでは、マイク感度は3種類選べるうちの2番目(中間)、ピアノにかなり近いい位置に椅子などに置いて録音するのが、音質もまずまずの状態で録音できるようです。
録音した演奏は、ICレコーダーの再生機能で聴くことができますが、ヘッドフォンやイヤホン、小さなスピーカー等を使用すると音が割れずに聴きやすいようです。もちろん、録音したファイルをパソコンに入れて聴いたりソフトで編集もできます。
では、筆者のICレコーダーと環境で録音したMP3ファイルを例として掲載しておきます。
パソコン本体の音量調節で大きめにすると聴こえやすいでしょう(サンプル録音を聴くには、MP3形式のファイルを再生できる、Windows Media Player や QuickTime Player などがパソコンにインストールされている必要があります)。
このサンプル録音ではICレコーダーの音質設定は普通(高・普通・低の3段階)で録音していますが、練習の確認には十分聴こえる音質になっていると思います。
録音を聴いて気がつくこと
録音した自分の演奏を聴いてみると、さまざまなことに気がつくと思います。
「思ったよりもテンポが一定ではなかった」
「歌って弾いているつもりのメロディーが、全くそうではなかった」
「伴奏がかなり大きく聴こえていた」
「想像していなかった変な間があった」
「拍子感が感じられない演奏だった」
など、たくさん感じることがあると思います。もしかしたら想像していた演奏を全く違うと感じることもあるかもしれません。
もちろん、演奏中には演奏の音が聴こえているはずで、それは録音された音よりも本来は判断がしやすいはずです。しかし、演奏者は楽器に近く、また「演奏中」という極めて主観的な立場にいるために、演奏中に客観的に自分の演奏を聴くことは非常に困難です。
つまり、録音して聴くことの意味は、演奏をできるだけ客観的に聴くことに近い状態をつくりだし、
「私はこういう演奏をしているつもりなのに、実際には違って聴こえている」
という、イメージと実際の演奏のギャップを埋める作業がしやすいということでしょう。
曲が仕上がりに近くなった時や、練習段階での確認に有効に使ってみましょう。曲を通して弾く習慣をつけることにもつながります。
レッスンを録音する
普段のピアノ練習に録音を使うのはもちろん有効ですが、レッスンで使ってみるのもいい方法です。
レッスンの様子を録音して聴いてみると、先生の指導の前と後では、自分の演奏がどのように変化したのか。また、指導の意味を理解して、レッスンのその場でどれくらい演奏の質を高めることができたのかがわかるでしょう。
また、レッスン中に指導された注意点や今後の練習方法などは、日数が経過すると記憶があいまいになってしまうこともありますが、レッスンを録音して練習前に指導されたポイントを確認してみる方法もあります。このようなことが、ビデオやカセットでレッスンを録音録画していた時代と比較すると、ICレコーダーなら手軽にできます。
ただし、レッスン風景を録音されることを嫌がるピアノの先生もいると思いますので、事前に確認をしてみたほうがいいでしょう。
もちろん、先生がレコーダーを用意して生徒の演奏を録音して、レッスン中にそれを聴いていろいろと話し合うのもいいでしょう。レッスンでうまく利用すると、生徒の実力アップにも大きな効果があると思います。
録音活用の注意点
このように、手軽で便利なICレコーダーによる演奏録音の利用ですが、注意したいこともあります。
まず、当然ですが録音されて演奏は生演奏とは全く違うということです。音楽の全体的な仕上がりや傾向、バランスなどを聴いて確認するのには役立ちますが、細かいペダルの使い方や微妙なニュアンスや高度なバランスを把握することは難しいでしょう。
そして大事なことは、自分の演奏を録音していろいろな改善点を見つけたとしても、やはり自分の演奏ですから、客観的に聴いているつもりでも、気がつきにくい欠点を聴き逃す可能性はあるということです。「録音して確認したから大丈夫」という安易な考えになってしまうのではなく、演奏をできるだけ客観的に判断するための、手段の一つだと思っていればいいでしょう。
また、できるならばいつも家のピアノなどの決まった場所ではなく、他のピアノでも演奏して録音してみることがおすすめです。ピアノを置いているレンタルの練習室やスタジオなどで弾いて録音してみると、またいつもとは違った感じに聴こえると思います。
録音は適度な緊張感も作り出すので、発表前の本番の予備練習やリハーサル気分にもなれますから、ぜひうまく使ってみるといいでしょう。
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