ピアノの上達では効率の良い練習方法やメニューを考えるのは当然ですが、もう少しじっくりと取り組んでいく方法もあります。
その一つが「作曲家一人を集中的に弾いてみる」ことでしょう。ここでは作曲家一人を重点的に取り組むことについて考えてみましょう。
一人に絞る
練習メニューを考えるで書いているように、ピアノの練習は一般的には、タイプもバラエティーに富んでいる複数の曲を同時進行して弾くことが、上達への近道となります。
しかし、時間の都合や大人の方でそれほど多くの曲を常に弾くことが現実的ではない場合などは、逆に一人の作曲家のピアノ作品をある時期に集中的に取り組んでみる方法もあり、これにはいくつかの利点もあります。
その作曲家の1曲弾いただけでも、その1曲に関しての十分な演奏はできますが、2曲、3曲と弾いていくことによって、その作曲家の音楽の特徴をより把握することができるでしょう。
例えばモーツァルトのピアノソナタを数曲弾いてみると、音楽の進行にも慣れて傾向をつかみやすくなり、表現をしやすくなるかもしれません。また、次のモーツァルトのピアノソナタを譜読みする時の速度が、幾分向上する場合もあるでしょう。
また、逆に一人の作曲家でも異なる質の曲を書いていることを実感できるでしょう。
例えばショパンのワルツとポロネーズでは、同じショパンでも曲の持つ雰囲気も技術の質も異なる音楽だということが、弾いてみると一層実感できると思います。そして、その大きな違いがあるのに、やはりどちらもショパンのピアノ曲だということも、また面白さでもあり、同時期に弾く事でさらに実感できると思います。
集中的に弾いてスペシャリスト気分に
こんな風に、一人の作曲家のピアノ曲を数曲集中的に弾くことは、その作曲家の特徴を把握することだけではなく、演奏の自信にもつながるもので、ピアニストや音楽専門の学生などはよくやることです。
一般のピアノ愛好者も同じように一人の作曲家の曲をいくつか弾くことで、その作曲家のスペシャリストの気分になりましょう。
例えば、「私は最近、ベートーベンを4曲しっかりと仕上げたのだから得意」といった感じでしょうか。これは大きな自信につながるものです。
さらに、同じ曲でも様々な楽譜を見比べたり、多くのピアニストの演奏を聴き比べたりすることも、一人の作曲家をよく知る上で役立ちます。作曲家がピアノ曲以外の分野(交響曲や室内楽など)の作品もつくっていたら、それらも聴いてみるといいでしょう。
こうして一人の作曲家の多くの作品を知り、聴き、弾き、向き合うことによって、その作曲家に一層の親しみや偉大さを感じるかもしれません。
誰にする?
「一人の作曲家に集中も面白そう!」と思っても、では、一般のピアノ愛好者が集中的に取り組みやすい作曲家は誰なのでしょうか。
これは、好みからかなり左右されますが、初級から中級程度の曲(当サイトの★が2個や3個くらい)が多くあり、曲のタイプもいろいろと揃っているということを考えると・・・
ショパンが取り組みやすいと思います。ショパンは「上級者が弾くもの」というイメージをお持ちの人もいるかもしれませんが、短めの曲で弾きやすい曲もあるので、3曲くらいを期間をかけて集中的にじっくり練習しやすいでしょう。ワルツやノクターンなどからの選曲がしやすいと思います。(こちらの豆知識ショパンをご参考に)。
他にも、ベートーベンやモーツァルト、シューマン、シューベルトなどもいいでしょう。もちろん、これらの作曲家は一例ですので、お好きな作曲家で取り組んでみてください。
テーマを決めるのも楽しい
余裕がある人は、テーマを設定して一人の作曲家に取り組んでもいいでしょう。
例えば作曲された年代順に弾いていくという方法があります。作曲された年が正確には判明しない作品がある作曲家もいますが、その場合は作品番号の若い順で弾くのもひとつの方法です。
また、同じ調の曲を弾くというのも面白い方法です。バッハならインヴェンション・シンフォニア・平均律と、ニ短調の曲を続けて演奏などという、ちょっとした企画のつもりで取り組んでみるのも良い方法です。
こういった簡単なテーマ設定も、少しピアニスト気分になれる方法ですから、いろいろと考えてやってみると、日々のピアノ練習も楽しくなるでしょう。