ピアノ演奏をする時に、曲に難しい部分がある場合の練習方法を考えるページです。
曲の難所が苦しい演奏になってしまう
と思っている方も多いでしょう。たた漠然と回数を練習してもそれなりに弾けるようになる場合もありますが、難所を攻略するための練習方法をある程度確立しておくと便利です。
今年2010年はショパンとシューマンの記念年なので、バラードやスケルツォ、ソナタや謝肉祭などの大きな曲に挑戦する方も多いと思いますが、ここでは難所攻略のヒントや練習方法を考えてみましょう。
指使いを十分に検討する
実力で弾けるくらいの曲なのに、難しいと感じる箇所がある場合には、指使いを十分に検討してみましょう。それだけでスムーズに弾けることはよくあります。この時検討する順序としては、
1.基本的指使いで弾く 〜 その調の音階やアルペジオ、3度などの通常の基本的な指使いをまず試してみましょう。無意識のうちに弾きにくい別の指使いになってしまっている人もいるくらいですあから、まずは基本指使いに戻ってみることが近道の場合も多いものです。使用している楽譜に作曲者や校訂者の指使いが書かれている場合は、その指使いを何度も試してみましょう。
2.工夫された指使いで弾く 〜 基本的な指使いでは弾きにくい箇所もあるでしょうから、その場合は工夫が必要です。同じ曲でもいくつかの楽譜を比較すると、弾きやすい指使いが見つかる場合もあります。
また、こちらの⇒指使いを考える1などの実際の曲目を使った弾きやすいための指使いなどを参考に、各自いろいろと工夫してみましょう。
反復練習のコツ
弾きにくい難所を多くの方が何度も反復練習をすると思います。それはもちろん必要なのですが、漠然と何回も弾くのは効率がよくありません。
そこで、反復練習にも工夫が必要です。
1.ゆっくり弾く 〜 ゆっくり弾くと書くと、「なんだ、そんなことか」と思う方もいるかもしれませんが、多くの方が出来ていないと思います。
しっかりと弾ける人は、まるで筋肉に記憶させるかのように恐ろしいほどゆっくりなテンポで弾いて、指の動きと鍵盤の連動、そして音の出方を確認しているのです。多くの方は、これがしっかり出来ていないうちにテンポを上げて弾いてしまうので、結果として弾けない状態の仕上がりになってしまいます。
つまり、スピード以外は完全に弾ける状態で、それを繰り返し練習することが大事です。
ゆっくり弾けないうちは、速く弾けているようでも誤魔化しが多く確実ではありませんし、かえって不完全な状態の演奏が脳に残っていくので、弾けたように感じていても確率は良くないでしょう。また、ゆっくりと弾くことは指のトレーニングにも有効です。
2.細かく分けてからつなげる 〜 長めの音階系やアルペジオなどのパッセージを弾くために有効な方法です。
例えば、このような16分音符が連続では、まとまりをゆっくりと弾くだけではなく、いくつかのブロックに分けて、分けた部分ごとに完璧に弾けるように練習します(紫の枠)
弾けるようになったら、2つをつなげて弾く、他の箇所も2つをつなげて弾く(青の枠)。組み合わせを変えて2つつなげて弾く(赤の枠)。
それもできたら3つを・・・といった要領で、最後にはパッセージ全部を通して弾けるようにします。
これほど細かい部分が無い曲や2ページ以内の短い曲の場合も、一部分が弾けたらすぐに通し練習するのではなく、その少し前後も含めてつなげて弾けるのか試してから、全体の通し練習をするといいでしょう。
3.ゆっくりと速くで動きの質を確認 〜 ゆっくりと弾く練習はとても大切ですが、曲のテンポで弾いた時と動きの質が同じ(スピード以外の)に弾けることが重要です。
長い音階系や音域の広い分散和音などをゆっくりと練習するときに、必要以上に指のくぐりなどをしていると、ゆっくりでは弾けていてもテンポを速くした時には苦しい場合もあるでしょう。
ですから、時には少々速めのテンポで弾いて、だいたいの動きを確認していてみることが大事になります。その確認した動きでゆっくり弾くようにしましょう。
指使いを再検討する
十分に研究した指使いで確実にゆっくりと弾けるようになったのに、テンポをあげてみると弾きにくさを感じることもあるでしょう。
そのうち慣れて弾きやすくなる時は良いのですが、テンポをあげて何度弾いても違和感が残る場合には指使いの再検討が必要です。
曲が少し仕上がってからの指使いの再検討をしている人は、一般にはそれほど多くない印象ですが、難所を乗り切るためには面倒だと思わずにやってみることをお勧めします。
音楽の感じ方を整理する
上手く弾けない箇所がある場合に、音楽の感じ方が整理できていない場合があります。
例えばフレーズの感じ方などが、その曲の本来のフレーズ感と異なって弾いていると、音もリズムも間違っていないのに上手く弾けないものです。
こうしたことは、初歩的なことだと思われがちですが、楽譜をよく見て整理してみましょう。その曲の拍子、その部分のフレーズやデュナーミクなどを再確認して、音楽を感じて弾くようにすると曲の流れにのって弾けるようになるものです。
難所の前後も大事
苦手な部分や難所のパッセージなど集中的に練習して上手に弾けるようになっても、曲を通して弾くとつまづいてしまったり、パッセージの部分練習で弾くよりも無機質な演奏になってしまう人もいるでしょう。
原因は様々ですが、難しい部分をうまく弾くためには、その前後の演奏も大事です。
例えば・・・難しい部分に入る前を弾いている時点で、既に構えたような余計な力が腕や手の甲や肩などに入っていないか?そして心も必要以上に緊張していないか?
難しい部分を弾き終えた後の演奏で、安堵感で集中力が途切れていないか?逆に難所の緊張感を腕などに必要以上に維持してしまっていないか?
そうしたことを確かめながら弾いてみるためにも、難しい部分自体が弾けるようになったら、その部分の少し前から少し後までの範囲を弾く練習をすると効果的です。
少しの期間寝かせてみる
ある一定期間集中的に練習しても、どうしても解決できないような箇所がある場合には、その部分はしばらくの間弾かずに、少しの期間寝かせてみるのも方法の1つです。他の部分や他の曲を弾きましょう。困難な箇所を少し弾かないで寝かせて、ある時に弾いてみると意外にも解決してしまう場合があります。
これは、同じ部分を集中練習することによって無意識にうちにできてしまった硬直感が、しばらく弾かないことによって薄れたのかもしれないですし、脳が整理されたのかもしれません。
全く別の要因かもしれませんが、こうしたことはピアノではよくあることです。
ただし、しっかりと何度も何日も練習しても上手く弾けない時に、寝かしてみると上手くいくのであって、少し弾いたくらいで「無理そうだから寝かせる」というのは、当然ですが上手く弾けるようにはならないでしょう。
ポイント
難しい箇所の練習では、ただ漠然と何度も回数を弾いている方も多いと思います。回数は必要ですが、限られている時間をうまく使うためには少しの工夫が大事です。
ゆっくり弾く、指使いの徹底研究、難所の前後を含めての練習などを、日ごろからしっかりやることが上達へ効果的だと思いますので、できることから上手に取り入れてみるといいでしょう。
また、弾きにくい箇所や気になる箇所があると「早く弾けるようにがんばろう」と反復練習をたくさんやりたくなりますが、1日や2日で解決しようと思わないことも重要です。
「この箇所は今日中に弾けるように」などと思うと、どうしても余計な力も入りやすく、かえって崩れてしまう要因にもなりますので、「今日はここまで、また明日弾こう」と思うくらいのほうがいいでしょう。“寝て、また起きて”の繰り返しが、ピアノ上達には必要ですから、それなりの日数もかかるものです。
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