大人の方でピアノはじめる方が、ここ数年で結構多くなってきているようです。
自分の好きな曲を、かっこよく弾けたら楽しいことは、子供も大人も同じなのかもしれません。
でも、一口に大人のピアノを言っても、状況は様々だと思います。上達のヒントは基本的には各ページを参考にしていただけたらと思いますが、このコーナーでは、大人のピアノがもっと楽しくなるようなことを、考えて見ましょう。
有利と不利を認識する
大人になってピアノを弾こうと思うときに、誰もが心配するのが「指が動くだろうか」ということでしょうが、それも含めて簡単に大人と子供の違いや特徴を見てみましょう。
大人やご年配の人 | 特徴 | 子供や若い人 |
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今までにやってことがない動作である「ピアノを弾く」ということに、神経や筋肉がすぐには反応できないので、思うように指が動いてくれない。 しかし、手はしっかりしていることが多く、一般に思われているよりも、弾いているうちにだんだん慣れて筋力もつき指が動くようになる。 |
指の動き | 指を動かすほどにどんどん動くようになる。また、発達途中の幼少の頃は特に指の動きに関しては上達スピードが凄い。が、逆にぐにゃぐにゃとしてしまう人も。 筋力がつく時期には、指はますます強化される。 |
知っている曲が多いので、弾くときの手助けとなる。楽譜が読めなくても、すぐに理解できるようになる。 | 曲の知識 | 知っている曲数もそれほど多くないので、楽譜から弾けるように譜読みを習得する必要がある。耳のコピーが得意な人もいるが、それほど多くはない。 |
大人の人は自分の弾きたい曲のイメージを大抵持っているので、それを生かすアドヴァイスをすれば、かなりの演奏効果をあげられる場合が多く、自分の中の音楽を出しやすい。 | 表現力 | 音楽を今までに体で感じてきた人は、自分でもピアノで表現できる人が多いが、みんながそうとは限らない。ただ何となく弾いてしまう人もいるので、表現力まで導いてやる必要がある。 |
大人になってからでは、リズム感を鍛えるのは困難な面もあるが、これも考え方次第。各個人の持っているリズム感を生かすような練習をしたい。 | リズム感 | 子供はリズムをとることが好きな場合が多いので、リズム感が鈍い人でも大抵の場合、練習をするとどんどん上達して、素晴らしいリズム感を身に付けることができる。 |
他にも沢山の要素がありますが、ざっと比べてみる要点はこんなところでしょうか。
子供は感覚的に優れていて吸収がいいので、あまり物事を考えなくても上達していきますが、大人は同じようにはいきません。しかし、大人には考えるという手段があります。ですから、ちょっと上手くいかないようなことも、少し間をおくようにして、考えていけば突破口が開けることも。
また、私もこれまでに、そして今も大人の方のピアノレッスンをしていますが、当初考えていたよりも、みなさん指が動くようになります。
もちろん大人の方でも、全くの初心者と、以前にかなりやっていた再開者とでは、かなり状況は違います。
やはり再開の方は指が動く傾向にありますが、1.指を鍛えるで書いているように、昔の手のポジションでうまくコントロールができない人もいます。
大人のピアノ上達のポイント
大人の方がピアノが少しでも上手くなれるようなポイントをあげてみますので、先生方や独学で弾いている方も、参考にしてみてください。
知っている曲や親しみやすいを優先に
私は大人の方のピアノレッスンには、その方が知っている曲または親しみやすいメロディーの曲を優先します。大人の方には全く馴染みの無い曲を弾いてもらうというのは、抵抗感が強い場合もあり譜読みに時間がかかる場合もあるので、特にふ大人の初級者の場合には親しみやすい曲がレッスンに有効です。
ですから、ある程度の指の練習というのが必要だと感じても、教材や練習曲集の選択には、気を使ったほうがいいと思います。例えば、初心者だからだといって、バイエルやツェルニー100番練習曲のようなものは、ちょっと疑問です。
また、大人の方にはブルグミュラーの1冊弾ききってもらうという練習法がいいとを提唱する人がいますが、私はこれにも疑問を感じます。ブルグミュラーはそれほど和声の変化がないので、どうしてもあきやすいと思うのです。事実、私もこれまで数人の方に自ら弾いておすすめしたこともありますが、あまり良い反応ではありませんでした。
ですので、大人の方が知っているメロディーの曲が、適度な初級レベルに編曲されていて、尚且つ安っぽく、子供っぽくないような曲集を数冊用意して、レッスンに使用するのが良いと思います。
曲 名 | 難易度 | ちょっとコメント |
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おとなのためのバイエル併用曲集 橋本晃一 編 |
★から★★★ | 最近はたくさんの大人のピアノ用曲集が出版されていますが、早くからこの分野の普及に尽力してきた橋本晃一氏の編曲による曲集です。 何とか両手で弾ける人くらいのレベルから、後半のニーノ ロータのロミオとジュリエットやシャンソンの枯葉など、名曲が揃っています。 特に数曲入っているイ短調の編曲は、弾きやすさと演奏効果が両立されているので、それほど技術力がなくてもピアノ演奏が楽しめる、大人ピアノ曲集の秀作といえますし、後半の曲は人前で弾くレパートリー曲としても十分に演奏効果のある編曲です。 |
おとなのためのピアノ教本 (Method1) 橋本晃一 編 |
★から | 上の曲集と同じく、橋本氏による大人のための教本です。全くのピアノ初心者の方や、基本的なことからきっちりとやりたいという方は、教本タイプのこちらもいいでしょう。解説がわかりやすいので、まずは独学でやってみるという方にもお薦めです。 3巻くらいから、やや内容的に複雑になっていき、5巻は本格的なピアノ曲を収録しています。私の教室では、高校生くらいからピアノを始める人にも使用しています。 |
CD付 大人のためのピアノ悠々塾 入門編 |
★から★★ | 教育テレビで放送されている「趣味悠々」の大人ピアノシリーズです。程度は他にも「基礎」や「初級」といったレベルが用意されていて、自分にあったものを選択するといいでしょう。 この入門編は、簡単に編曲されたクラシックなどが入っている楽譜集です。模範演奏のCDつきなので、特に家で独自にピアノ練習をしたいという人にはいいかもしれません。 |
ワンランク上のピアノソロ 新・坂本龍一ピアノ名曲選 |
★★★から | 中級くらいの実力がついてきて、「少々本格的でかっこいいピアノ曲を」という大人の方におすすめが、坂本龍一ではないでしょうか。「ラストエンペラー」や「戦場のメリークリスマス」などのテーマ曲に挑戦してみましょう。 坂本龍一のピアノ楽譜はいろいろな曲集がありますが、このデプロのアレンジは弾きやすさと演奏効果の両方が考えられています。 |
他にも大人がピアノを弾くための曲集はいろいろと出ていますが、ちょっと気をつけたいのはハ長調のみに編曲されたものです。白鍵のみだと確かに最初は簡単に感じるかもしれませんが、黒鍵の対して難しいというイメージを持ってしまっては、なかなか先に進みにくくなります。
ピアノは奏法上では、黒鍵がほどよく使用する曲の方が、白鍵のみのハ長調よりも弾きやすいものです。譜読み上でハ長調の曲が簡単なのはわかりますが、シャープ(#)やフラット(♭)が2個や3個ついても、大人にはそれほど難しくないと思われます。ですので、大人のピアノと称される曲集を選択するときも、ハ長調のみの編曲ではないものを選んだほうが、のちのためにも得策だと思われます。
また、楽譜を読めなくてもピアノが上達するような練習を推奨している本などもありますが、逆に時間と労力を費やしているような気がします。楽譜を読むことは簡単ですから、全くのピアノ初心者の方でも、教本が1冊あれば誰でも習得することが出来ます。例えば、
世界の名曲を弾いてみよう―西村由紀江のやさしいピアノレッスン |
★ | 自作の曲をピアノで奏でる癒し系ピアニストのパイオニア的存在、西村由紀江による、大人の初心者のためのピアノ講座テキストです。ピアノの鍵盤に触れたことのない初心の方でも、回を重ねるごとに上達していけるように、様々な解説や工夫があるテキストです。 映画の名曲などを簡単に編曲したものが弾けるようにが目標です。 |
現在(2006年6月から)放送されている教育テレビの趣味悠々のピアノ講座は、片手の指1本から始める全くのピアノ初心者のための番組ですが、テキストは最初から楽譜を使用しています。鍵盤の位置も色を付けてわかりやすくするなど工夫されているので、初めてピアノを弾くという大人の方でもスムーズに入っていけるでしょう。
技術にこだわりすぎないように
手や指の基本フォームや指の神経独立、よい筋力など、これらの基本技術の上にさらなる技術を積み重ねていくことは大事ですが、大人になってピアノを始める方は、あまりこだわらない方がいいと思います。別にプロになるわけじゃないのですから。
それよりも、実際にピアノの音をよく聴いて、自分が目標とする曲が弾けるような練習に時間をつかいましょう。
それでも指の練習を重点的にしたいという方は、ちょっとした音階練習でもいいでしょう。指くぐりやまたぎなどを無理のしない程度にやっておくだけでも、かなりの効果はあります。
また、ペダルも思いっきり使いましょう。ペダルはごまかすためにあるものではありませんが、大人のピアノではそういう使い方もアリです。音階やアルペジオなどで指使いがうまくいかずに途切れそうなところは、ペダルを踏んで堂々と弾きます。
目標は現実的に
ピアニストのリサイタルやテレビやCDの演奏を聴いて、弾きたい曲の理想が大人の方にはあるかもしれません。目標を持つことはピアノを弾く上大事ですし、やる気もでるでしょう。
ですが、あまりに目標レベルが高いと、長い期間をかけてもそこまで到達できずにピアノがつまらなくなってしまう可能性もあります。ちょっと弾いたくらいでは、横を見ながら余裕の表情でピアノを弾けるようになどならないのが現実です。
そして、大人は曲を仕上げる段階になっても、なかなかテンポどおりには弾けないかもしれません。リズム感と指の両方が主な原因ですが、これらはすぐには身につかないものでもあります。
そういった時には、難しいと思う箇所は堂々とゆっくり弾きましょう。「私はゆっくりと弾いているんだ!」と自信を持って弾けばいいのです。
こんな感じで要領よくやっていくことが、大人が趣味で楽しむピアノには必要だと思います。別に悪いことではなく、方向性の違いだと思えばいいことです。まずは自分が楽しくないと、人にも聴かせられません。