ピアノを弾く上で重要である和音について考えてコーナーです。
和音をしっかり弾こう
と思っている方はたくさんいるでしょうが、良い響きの和音にならないと感じている人も多いかもしれません。
ここでは、和音奏法の基本的な事項を考えてみましょう。
和音の良い響きのためには
ピアノで和音を弾くときに、重要となるポイントは主に2つだと思います。
ひとつは同時性であり、もうひとつは音のバランスです。
どちらも考え方としては難しくないですし、普段から意識して弾いている人も多いでしょう。
和音の同時性とは、言葉のとおりで、和音は常に同時に演奏されるのが当然です。例えば3つの音の和音を弾く時は、3つの音が同時に鳴るように弾くことです。ずれて鳴っていると、きれいには聴こえません。
音のバランスも、言葉のとおりで、和音は常に音のバランスに配慮して演奏されるのが当然です。例えば3つの音の和音を弾く時に、どの音を強くして、どの音を弱めにするかということです。バランスが悪いと当然きれいには聴こえません。
この2つのポイントを把握していれば、和音を良い響きで弾くことができます。
「なんだ、そんなことか」と思った人もいるでしょう。考えてみれば簡単なことです。(知らなかったという人もいるかもしれませんが、今ここで知ったのですから、心配はありませんね)
しかし、基本である同時性と音のバランスを、ピアノを弾いている人はどれだけ実戦できているのでしょうか。以下から同時性と音のバランスを個別に考えてみましょう。
同時に弾くのは永遠の課題?
実はピアノで和音を完璧に同時に弾くのは非常に困難な作業です。3つくらいの和音を同時に打鍵できていると思っている人でも、次の譜例の和音を、メゾピアノやピアノくらいの強さのつもりで和音を弾き(右手でも左手でも弾いてみましょう)、耳でよく聴いて確かめてみてください。本当に同時に音が鳴っていますか?
左から1つ目は白鍵のみの和音で比較的弾きやすいでしょう。2つ目は黒鍵のみの和音で弾くのは簡単ですが、曲の静かな出だしだとしたら、同時に弾くのは少し難しいかもしれません。3つ目は音が5つの和音です。手の大きい人にとっては楽でも、小さい人がしっかり同時に弾くのは簡単ではありません。また、どの和音も同時に弾けているつもりでも、微妙にタイミングがずれて鳴っている人もいるでしょう。
もしかすると、微妙どころか明らかに同時では無い人もいるかもしれません。普段は曲の中で何気なく「ジャーン」と鳴らしてしまっている和音も、よく聴くとタイミングが同時ではありません。これは奏者自身ではそれほど気にならなくても、他人が聴くとかなり気になることもあり、和音の同時性に全く気を使っていない人の演奏は、すぐにわかるものです。
練習の第一段階としては、普段ピアノを弾く時に、和音が同時に鳴っているかしっかりと自分の耳でよく聴くこと、そして指の感覚で鍵盤を感じることです。和音をどのような動作で弾けば同時性が得られるかといったことよりも、ピアノの音に注意して、指の感覚を大切にすることが重要です。この意識を持っただけでも、かなりの違いはあるでしょう。そして、聴けば聴くほど練習すればするほど、同時性からは遠いことを実感してしまうかもしれません。
ですが、和音が同時に鳴っていないからといって、それほど悲観することもありません。完璧に同時に鳴っている和音は理想ではありますが、ピアニストでも和音の同時性に欠けている人は多くいますし、厳密に同時に鳴らすこことは、人間には不可能に近いことです。ですから、一般的な人間の耳では同時に聴こえるくらいの同時性があれば、合格ということになると思います。
また、和音の弾き終わりに鍵盤から指を離すときも、同時でなければなりません。ペダルを使用して指ではなくペダルで音を鳴らし終えれば大丈夫ですが、ペダルを使用しない和音のときは、注意が必要です。せっかく同時に和音を弾けても、バラバラに鍵盤から指を離しては、音の切れるタイミングが和音の各音で異なってしまいます。これには無頓着な人もかなり多いので、注意したいものです。
- 和音を目でも確認
- 耳と指の感覚で確認する和音の同時性ですが、身近に生のピアノがある人は、中身を見て目でも確認してみましょう。和音を弾いてみて、ハンマーが弦を叩く瞬間を見ると、いかに揃っていないかが確認できると思います。和音を弾き終える瞬間も、ハンマーが離れるタイミングを見てみましょう。
音のバランスは奥深い
和音を弾く時に音のバランスを考えるといっても、どういったバランスが良いという決まりはありません。曲の箇所や役割によって、様々な状況が考えられるからです。
例として次のようなハ長調の和音を弾いてみてください。
どの音を強めに出して、どの音を抑え気味にすると、良い響きに感じられるでしょうか。
同じような音量バランスを和音を厚みがある響きと感じる人もいるかもしれませんが、全ての音が同じ音量の和音は、一般的にはよい響きだと感じられないものです。(人がピアノで弾いて全く同じ音量の和音を体験するのは難しいですから、パソコンの音楽ソフトなどでやってみるとわかりやすいでしょう)。
そこで、良い響きが得られるような音のバランスを考えてみましょう。このハ長調の和音ですと、一番上の音(声部でいうとソプラノですね)のド レ ド シ ドが、他の音より幾分聴こえたほうが、良い結果が得られることが多いと思います。逆にいうと、他の音を幾分抑えるということです。当然、他の声部の音の動きも感じてください。バス音はド ファ ソ ソ ドですね。
さらに、左手に一つの音(バス音)があり4声部ですから、、外声部(ソプラノとバス)の内声部(アルトとテノール)は、外声部が大きめで、内声部が抑えめというのが、一般的だと思います。さらに、ソプラノとバスでは、ピアノの場合はソプラノがより聴こえる方が、バランスのとれた響きでしょう。
例えばオーケストラでは、楽器の音色によっても聴こえ方が異なるので、どんなに楽団の規模が大きくても、高音で通った音を出すピッコロは1人という言い方もあります。つまり最高音は聴こえが良いという意味ですが、ピアノでは高音部を意識して大きくした方が、バランスが良い場合が多いかもしれません。
しかし、これは一例です。バス音をもっと強調したバランスで迫力の演奏をしたい場合や、バスを極力抑えたバランスも考えられますし、内声音を強調するバランスも、曲によってはあるでしょう。最終的にはピアノ奏者自身の好みだと思います。
それでも、いつも和音のバランスは重要です。気を配っていない和音のフォルテやフォルティッシモは、すぐに汚い響きとなります。また、一般のピアノ愛好家の方は無意識のうちに、バス音や内声部音がいつも強く出てしまっている場合が多いので、最初のうちは最上声部のソプラノ音の強調ということに意識を絞るだけでも、かなり良くなるケースがあります。
和音のワンポイント
- 和音は重要
- ピアノでは、指を動かすことに集中しがちですが、一般に趣味でピアノを弾く人によっては、ポピュラー系やJ-POP系のピアノ編曲もの、比較的ゆるやかなテンポのクラシックなど、和音が重要なことの方が多いと思います。
- 和音を弾く練習に関して
- 強音で和音をただ弾いていると、「弾いている爽快感だけに浸りがち」です。良い響きを得ようとするなら、基本的な事柄を確認して和音を弾いてみましょう。
上達のヒントのトップに戻る